コロナの影が晴れた日本の観光地は、外国人観光客で溢れ返っていた。
円安の影響もあり、今やどこを歩いても外国人の姿が目に入る。
そして、観光地の物価はインバウンドの波に乗り、現地の日本人には高価に映る価格設定になっていた。
これは、十数年前の東南アジアを思い起こさせる光景だった。
かつてのジャカルタでは月給6000円のウェイターが働くレストランの向かいに位置する大手カフェチェーン店のケーキセットは、1000円もしていた。
月6回通えば庶民の月給が吹っ飛ぶ価格のケーキセット誰が食べるのかと、当時は不思議に思ったものだ。
当時は、この光景が日本で見られるとは思われなかったが、今や現実として迫っている。
さて、最近のインバウンドビジネスだが、関西のある場所で、日本伝統文化の仕事をしている知り合いがいる。
その女性の年齢は30代半ば、年収は軽く6000万円を超える。
その仕組みは非常にシンプルだ。
彼女は1日平均70人の外国人観光客に、ほぼ毎日休みなしで、その日本の伝統文化を提供している。
その内容をここで記載すると、彼女のプライバシーにかかわる可能性があるので伏せておくが、そのビジネスは原価率が低く、彼女一人で行っているので、人件費はかからない。
そして自身が所有する物件を使っているので、家賃もかからない。利益率が非常に高いビジネスモデルである。
ここでの鍵は、巧みなスキルと個々の長所を最大限に生かした点にある。
だが、ここでもやはり不動産投資の力こそが、物を言う。
実店舗型ビジネスの世界では、開業後すぐに閉店する店が少なくない。その一因として、「家賃倒れ」という言葉がある。
文字通り、家賃の負担が売り上げを圧迫し、事業を妨げる。
しかしながら、自ら所有する物件であれば、毎月の家賃の支払いを心配する必要はない。これだけでも相当な利点であるが、さらにインバウンドビジネスにおいては、営業拠点とする不動産の立地が重要となる。
元々所有している不動産を活用して事業を始める場合は仕方がないが、もし今後購入すると考えるならば、立地選びのポイントとして、観光客が多く訪れる建造物や公園、有名な観光地、世界遺産などの近くに拠点を置くことが良いだろう。
多くの観光客が、そのついでに利用してくれる仕組み、俗にいうコバンザメ商法である。
言うまでもなく彼女のビジネス拠点も、そのような場所に位置している。
さて、彼女はこの仕事が好きで続けているのだが、プレイヤーとしての限界はあるだろう。
まだ早いが老後を考えると、一気に稼いで投資家になるか、ビジネスを発展させて売却するなど、次の一手を考えねばならない。
いずれにしてもインバウンドビジネスには英会話が必要だが、この先生は英語を話せるのは勿論の事、その日本文化にも精通している。
「英会話×日本伝統文化」。これが彼女の強味、インバウンドビジネスで利益を生む方法だ。
そして重要なのは、需要はあるが供給が不足している事だ。
日本を訪れる外国人は、日本の文化や伝統に興味がある。
そのため、これらを英語と結びつけることで、利益を上げることができる。
英語ができる人の多くが英語教師を目指すが、市場は飽和状態だ。
だからこそ、英語を活かす他のビジネスを模索すべきだろう。
ちなみに、先ほどの女性経営者のビジネスは、コロナ禍での利益が90%以上も下落したという。
常にリスク管理は不可欠だ。
さて紹介した例は非常に利益の高いビジネスモデルではあるが、彼女は金の亡者ではなく、ただ純粋に好きな仕事をしているだけと付け加えておこう。